ラタン(籐)という素材について
ラタンはヤシ科
- ヤシ科の植物ラタン(籐)
ラタンはヤシ科、アフリカ西部に9種、東南アジアに303種、太平洋諸島・オーストラリアに58種、計370種ほどが分布しています。多くは幹が細く直立困難なので伸長枝を展開し、茎や葉の表面に無数のトゲを持ち、ジャングルのさまざまな種類の樹木にからまって高く成長します。
長いもので200mに及ぶものもあり、根元から先端まであまり太さが変わらないのが特徴です。
ラタンの育つ熱帯雨林は世界でもっとも生物の種類が多く、未知の生物も無数にいます。一年中夏で、生物の楽園です。
年間の平均気温は27℃、雨は一年に4000mm以上も降るのですが、一ヶ月に200mmしか降らない乾季と500mm以上も降る雨季があります。
木々の高さは30~40mもあり、森の中は日光が届かず、ジャングルになっています。
しかし最近では環境破壊と地球温暖化でジャングル地帯も減りつつあります。今後もっとジャングルが減ればラタンも絶滅危惧種になるかもしれません。現にインドネシア
は世界で最も哺乳類の絶滅種が多いと言われています。敷物に向く良質なラタンはインドネシア産です。
野々山籐屋の籐むしろはインドネシア産の籐を使っています。
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ラタンは日本に生息していません。
- 東山動植物園内の温室
- 温室内のラタン
籐は熱帯雨林で育つ植物ですから日本の四季で枯れてしまいます。
池に生えている葦や、山で見かける山藤をラタンと勘違いしている方がいますが、日本では育ちません。
漢字で書くと籐は竹かんむり、藤は草かんむりです。
以前、愛知県の東山植物園の温室に数種類のラタンがありました。ラタンは生育が非常に早いのでここでは時々伐採して大量にならないようにしていました。
しかし現在東山植物園の温室は改修工事が入り、残念ですがプチジャングルにラタンは選ばれませんでした。もう、こんな光景は見られません。もう、ラタンは日本の植物園ではどこにも多分ないでしょう。
でも、今後いつの日か東山の温室に登場するかもしれません?年に何回か偵察に行き復活したらご報告しますね。
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ラタン「籐」は竹と違います
- 籐は弾力性があります
- 籐は自然の光沢です
ラタンの外観は竹に似ている部分もありますが,竹のようにまっすぐ上にのびるのではなくさまざまな種類の樹木にからまって伸びていきます。
また竹に比べ非常に軽く弾力性があり、竹のように節がありますが節と節との間に空洞はありません。
この軽さと弾力性を生かして籐家具が発達してきました。
籐は色も太さもさまざまです。ジャングルから切り出した籐は選別し、太くて軽い籐は曲げ加工に適しているので家具に、艶のある硬い籐は敷物にします。
野々山籐屋の籐むしろは籐本来の自然素材の光沢で、塗料などで色付けしてありません。
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籐は色々な物に利用されています
籐は消臭する素材ですので野々山籐屋では消臭材ムッシュラタンを開発しました。
他に敷物、家具、スクリーン。汗のすべり止め効果があるので釣竿やノコギリの柄に巻いたり、手すりや柱に巻きます。またスプーンを入れる小物カゴやバッグなど身近な商品でよく見かけます。
籐、籐むしろの歴史
- 室町時代から続く、籐の歴史
室町時代の御伽草子代表作「あきみち」に「とうまくら」がでてきます。文明本節用集(辞書)には籐。
江戸時代(1603年)にはトウムシロTomuxiroという言葉が記された『日葡辞書』が残されています。このころ籐が敷物として認識されていたのでしょうか。
籐は日本にはありませんので貴重な輸入品です。高価な敷物とてお金持ちの集まる料亭や祇園のお茶屋、呉服屋、酒屋の奥座敷などで使われていたようです。
夏の蒸し暑さを快適にする最高級の「おもてなし」です。
すべり止めのためノコギリの柄や釣竿の柄に巻いたり、弓の補強に使われることもあります。
熱気球のバスケットなども、軽くてフレキシブルなため籐で編んだ物が用いられることが多いです。
近年NHKの朝の連続ドラマ「瞳」では居間に籐むしろが敷いてありました。また「だんだん」では舞台が祇園のせいかお茶屋のお座敷のシーンや呉服屋の奥座敷のシ ーン
にたびたび籐むしろが写っていました。
最近「ひちりき」と言う楽器のリード部分に使うので籐をわけてほしいと言った依頼ありました。
篳篥(ひちりき)は雅楽で使う楽器です。笙(しょう)、龍笛(りゅうてき)と篳篥(ひちりき)をまとめて三管と呼び、大篳篥は平安時代にはふんだんに使用されていたと文献にあります。
リードを買うと1個籐の輪っかのようなもの付いてくるそうですが、その籐の輪っかのようなものを100個くらい作り置きしたいと・・・・・。
無粋で本物の篳篥(ひちりき)の音色聞いたことありませんが、手作りの輪っかで思い描く音色が出ること祈ります。
- 雅楽で使う楽器です。篳篥(ひちりき)のリード部分